「アエネーイス」日本語訳を読んでみた
私がウェルギリウス、及び叙事詩「アエネーイス」に心惹かれる理由の一つは、詩人の遺した言葉はかっこいいものが多いから、だと思う。
冒頭の「Arma uirumque cano」アルマ ウィルムクエ カノー
戦争と英雄を私は歌う
「Musa, mihi causas memora」ムーサ、ミヒー カウサース メモラー
芸術を司る女神ムーサよ、私にその理由を語れ
そして「私の好きなラテン語の言葉ベスト3」に確実に入るであろう
「Solve metus」ソルヴェ メトゥース
恐れを解き放て。
私は今、「アエネーイス」の講読に参加していて、辞書をひきながらラテン語で読み進むことに挑戦しているが、まずは日本語訳で読んでみようと思い、上下巻に分かれている岩波文庫の「アエネーイス」を図書館で借りてきた。
ぱらぱらとめくってみて、まず思ったことは、全部読めないまま返却することになるんじゃないか…ということだった。私はとても飽きっぽい性格で、長編小説とか読むのは大の苦手なのである。
読み始めて、特に大変だったのは第2歌と第3歌だった。ここでは主人公アエネーアースがカルタゴの女王ディードーに請われて、これまでのいきさつを語る場面なのだが、とにかく長く感じられた。「まだ終わらないーアエネーアースの話長いよ…」と思いながら読んでいた。それでも読み進めることができたのは、私は夜寝る前に少しずつ読んでいたのだが、眠い目をこすりながら、よくわからないながらも古代ローマ人の遺した叙事詩を読むということが、いつの間にか習慣になっていて、これをやらないと何となく気持ち悪く感じられるようになっていたからだと思う。
ようやく第3歌が終わると、第4歌はディードーが亡くなる場面で切ないのだが、切ないがゆえに美しいシーンもあり、第5、第6と進んでいくことができた。
ここまで来ると、半分読んだのだからこの調子で、という感じで下巻も読み終えることができた。2か月くらいかかったと思う。
そしてもう積読の心配はしなくてもいいだろうと思い、京都大学学術出版会刊行の、「アエネーイス」を購入した。あらすじはわかったので、解説から読み始めたのだが、この解説がウェルギリウス愛に満ちていて、何度も読んでしまい、なかなか本文まで至らないのだが、もうどこかに返却する必要もないので、ゆっくり読んでいきたいと思う。
日本語訳を読み始める前は、「アエネーイス」は英雄の活躍を華麗に語る勇ましい作品なのではと思っていた。しかし、読み終わって感じたことは、どうしようもない物悲しさだった。なぜこんなに悲しいのか、その理由を知りたい。
その理由を見出すことが、私がラテン語を学ぶ理由の一つであるように思う。