航海の始まり
現在、私は全6回の文法の講座を終えて、講読のクラスに参加している。
実際にラテン語で書かれた作品を読んでいるのだが、その講座で古代ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」を読むことになった。
いつか読んでみたいなあと漠然と思っていた作品にとりかかることになり、予習を始めたが、やはり難しかった。それでも楽しみに講座の日を待った。
12歌にもわたる長い長い叙事詩の冒頭は、すっきりとした3語から始まる。
Arma uirumque cano アルマ ウィルムクエ カノー
通常、戦争と英雄を私は歌う、と訳されるその3語、たった3語について、先生は30分以上かけて説明され、さらに「放っておいたら壊れたテープのように話し続けるので」と言われた。
戦争と英雄ーそれは主人公と、彼がこれから立ち向かう戦い、という意味だけではなく、古代ギリシャの2大叙事詩「イリアス」と「オデュッセイア」を指していて、この2つに匹敵するもの、いやそれ以上のものを俺がこれから歌うのだというウェルギリウスの強い意志がこめられていた。私はただただ圧倒され、ノートにたくさん書き込みをした。自分が想像していたよりもずっと高く、ずっと深い世界が目の前に広がっているのを感じた。
私は今、長い長い旅が始まったような気がしている。どこまでたどりつけるかわからないが、行き先を楽しみに、進んでいきたいと思う。そしてこのように美しい文学作品を生み出してくれたウェルギリウス、またこの作品を後世に遺してくれた先人たちに、感謝の気持ちでいっぱいである。